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2次創作 「ゴー・アラウンド」

ますます変なお話、すみません。
今度は、岡部さんが...痛い。


薪は岡部を引き連れて、地方に出張をした帰り道。
遠方なので、しぶる岡部を無視した形で機上の人となった2人。
航行は平穏無事に終わりに近づき、すでに機体は着陸寸前。
飛行機が怖い岡部は、息をつめて身動き一つしていない。身動きしたら、そのまま墜落すると思っているようだ。

ゴン、と音を立ててタイヤが地面に着く。
地面との摩擦で「キュッ」とタイヤがよじれて、白い煙がぱあっと上がる。
ガタガタガタっと機体全体が振動し、体を揺する。ブレーキがかかると、体が前に持っていかれる。
次に来るスラストリバーサー(逆噴射)の轟音とより強い制動を予想して、岡部は肘かけを掴んで身構えた。
このうるさいのが終われば、ボーディングブリッジに着く。もう少し、もう少しの辛抱だ。

エンジンの轟音が急に高まった。しかしいままで聞いたことがないほど、凄まじい音が響く。
轟音はもはや音ではなく、振動した空気が直接体に作用する。虫が這うようなむずむずを皮膚に与える。
しかも制動がかかるどころか、反対に加速している。それも離陸時以上の急加速で。
明らかに通常の着陸と違う。これでは止まる筈もない。

機体の振動が異常に高まる。
オーバーヘッド・ビン(荷物入れ)がぎしぎし音を立ててきしみ、シートはごんごんとお尻を突きあげる。
加速で背中をシートにへばりつかせたままの岡部には、何なんだかさっぱり分からない。
ただ異常事態で機体が止まらず、このままでは滑走路をオーバーランして機体は大破する。もしくはこのまま、機体がばらばらに分解する、という恐怖で頭がいっぱいになる。
もう限界だ と思ったとたん、いきなり機頭がぐいっと持ち上がり急上昇した。その上昇角度は通常の離陸時の比ではないほど、大きい。
真上に上がっているように感じるほどの異常な角度と、初体験の大きなGの変化の気持ち悪さが追い打ちをかけ、岡部の理性はとうとうプッツンした。

「まままま薪さん! 
 いったいぜんたいこれは何ですか何が起こったんですか故障ですか墜落するんですか。
 今すぐ飛行機降ります絶対降ります降りると言ったら降りるんです止めても無駄です俺は降ります。」

なんだかよく分からないことを叫びながら、岡部はシートベルトをはずそうと奮闘している。
ただ理性がプッツンしているためか、金具の外し方も分からないようで、ただガチャガチャ力任せに引っ張るだけ。

薪はいつも通りに、上昇・降下が怖く固まるある意味おとなしい岡部を、ほっていた。
理屈で何言っても、怖いやつには無駄だしな。

いつも通りの着陸と思いきや、そのまま離陸へと移行し急上昇する機体に、
あ、ゴーアラウンドするんだ。滑走路にまだ前機が残っていたんだろうか。
ぐらいに思っていた薪は、いきなりの岡部の雄叫びに驚いた。

岡部の顔は蒼白のまま目が血走り、中途半端な無精ひげやいかつい体と相まって、前科100犯の指名手配犯と言われても納得するほどの兇悪顔。
それが目を吊り上げて、力任せにベルトを引っ張っている姿といえば...あまりに異様。爪の先ほども関わり合いたくない相手である。

しかしこの急上昇中にシートベルトを外してしまうと、どんな事故になるか想像もつかない。
薪はあわてて、岡部の制止を試みた。

「岡部、岡部。大丈夫だ。ただのゴーアラウンドだから。もう一度着陸やり直すだけだから。」
言葉を掛けながら、岡部の手を掴んでやめさせようとする。が、薪もベルトをしたままの不安定な姿勢で、それでなくても岡部の力には到底かなうはずもなく、うまく制止出来ない。

そのうち、岡部がシートベルトの金具を外してしまった。
飛行機は低い高度のまま右側に旋回中。飛行機は右側に傾いているため、右側窓には至近距離で流れ去る地面が見える。それがパニックを増長した。

「俺は降りる誰が何と言っても降りるんだ二度と飛行機なんかに乗るもんか絶対絶対乗らないぞ。」

喚きながら斜めの通路を器用に走り、手じかなドアに辿りつくと、今度はドアロックを外そうとしている。
ジャンプシートのCAが制止しようと岡部の手にかじりつくが、非力な女性では目的を果たせるはずもない。

薪は真っ青になった。
まずい...。飛行中はオートマティックになっているドアが開くようなことがあったら...
非常用の滑り台が膨らみ展開されて、岡部の危惧通り本当に墜落することになる。

薪はあわてて追いつくと、岡部を後ろから羽交い絞めにしようとするが、簡単に降り飛ばされた。
くそ! 岡部の野郎。肝っ玉は半人前のくせに、力だけは2人前だ。
目の前の事件がやっと飲み込めた非常口席の男性数人が、CAの申し出がなくてもシートベルトを外して立ち上がった。
数人で何とか抑えつけた岡部の顔を、薪が数発殴る。その衝撃で、やっと岡部の目の焦点が合い始めた。抵抗が止んだ。

薪は岡部の顔に手を掛けて、その目を覗き込む。

「岡部、ぼくが分かるか?」 岡部が頷く。
「ただ着陸をやり直すために、いったん上がっただけだ。なにも心配はない。」 岡部が頷く。
「ぼくが大丈夫だといったら、大丈夫なんだ。いいな?」 岡部が頷く。
「席に戻れるか? それとも拘束した方がいいか?」 「..もう大丈夫です。すみません。」

CAや協力者に平謝りした薪は、岡部を先導して席に戻る。
席に座った岡部は、恥ずかしさで頭を抱えた。もう着陸を怖がる余裕も無いようで、今はその方がありがたい。

「おい、岡部。おいったら。」 
「...はい、薪さん。」 と、岡部の蚊が鳴くような声。
「ふふふ、第九にいい土産話ができたな。」 
「え、薪さん。皆に話すんですか? 後生ですから、止めてください。」
「ふん、そんな勿体ない事ができるか。こんな面白い話、ぼくがひとり占めするなんて。」

薪がこの騒ぎの溜飲を少し下げた所で、岡部はますます小さく小さく、豆粒の様に丸まった。




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コメント

【 ふふふ・・岡部さん・・・ 】
そんなに飛行機がダメなんですか・・・。

>前科100犯の指名手配犯と言われても納得するほどの兇悪顔。

・・・ひどい例えようですが、岡部さんには悪いが吹きました。
目に浮かんでくるようですよ、パニック状態の彼が。

>数人で何とか抑えつけた岡部の顔を、薪が数発殴る。

ぐーですか?ぱーですか?
すっごい気になります!!(なんで)
殴るっていうくらいだからグーかな?
でも薪さんはパーが似合います。

・・・へんなコメントしてすみません。
【 Re: ふふふ・・岡部さん・・・ 】
いらっしゃいませ~ こゆう さん

> そんなに飛行機がダメなんですか・・・。

そうなんですよ。私の脳内世界では、岡部さん飛行機大の苦手。

> ・・・ひどい例えようですが、岡部さんには悪いが吹きました。
> 目に浮かんでくるようですよ、パニック状態の彼が。

だって、あの顔であのガタイですよ? 
それが目吊り上げて、突進してきたら...だれでも逃げ出します。

でもそんな岡部さん、大好きなんです。岡部さ~ん。

> ぐーですか?ぱーですか?
> すっごい気になります!!(なんで)
> 殴るっていうくらいだからグーかな?
> でも薪さんはパーが似合います。

実は最初、「グーで殴る」と書いたんです。でも、おっしゃるようにパーの方が薪さんらしい。
いやいや、硬そうな岡部さん。 グーで殴らないと効果ないんじゃないかな。
あ、もみ合っている最中、グーで殴るのは難しい?

などいろいろ考えてしまい、結論出ず。
お好きな方で、岡部さん殴ってください。

またお越しくださいね~。 

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