スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2次創作 「貝沼 2」

しばらく亀、いやナメクジ更新が続くと思います。 
訪れてくださる方、本当に申し訳ない。 もう忘れたころにポチっと来て下れば、十分です。

さんざ待たせて、読みにく~いお話。
何処かでも言いましたが、マルキ・ド・サド 並みにつまんない独りよがりを延々と語ります。
原作の貝沼さんと全然違います。
途中でふう、とため息でたら、閉じるをぽちっとすること、お勧めします。





コンクリートの箱の様な、狭い部屋。
薄暗いその箱には高い小さな窓しかなく、外の気配は何も伝わってこない。
息苦しくなるほどの圧迫感。
いままで幾人もの人達が、外に出たいと拳でドアを叩いて叫んだろう。

そんな部屋で、俺は微笑んで待っている。俺の世界が、完成するのを。
あと少し手を加える必要があるが、その準備は万端で、手抜かりはない。あとは、その時が来るのを待つだけだ。
俺の世界、俺の女神、俺の至福、俺の歓喜、俺のすべて..俺の薪さん。
最後のピースをはめ込んで、俺と薪さん2人だけの完璧な世界を構築する。

15分置きに巡回する看守が通るまで、まだ少しある。
最後の時間だ。過去を反芻するのに耽って過ごすのも、悪くない。



俺の専攻は、数学だ。
小さな頃から、ロジカルな世界が好きだっだ。
公理に基づいて、証明された定理しか使わずに、完璧な世界(証明)を作り上げる。
誰がいつ何処解こうとも、100億光年先の惑星で異星人が解いたとしても、同じ結果にしかなりえない。
べたべたとした属人性を一片たりとも含まない、乾いた冷たい静かな 世界。

俺は神童と呼ばれていた。期待されて大学院に残った。
研究は群論で、テーマは「モンスター群」。
有限散在型群のなかで最も巨大で神秘的な、196883次元の「モンスター群」。
80801742479451287588645990496171075700575436800000000個の要素。
宇宙最大のその数は、人知を超え想像することすら難しいのに、1の狂いも許さぬまま確固として存在する。

そのモンスター群の「ムーンシャイン予想」を証明することに、俺はすべてを捧げた。
群論と現代数学の楕円関数論、全く関係がない2つの完結する世界が、奥底に秘めるであろう深い結びつきを見出すために。
より包括的な世界が記述出来る可能性を想像し、心は喜びでうち震えた。
ひそやかに隠された秘密を探し、幾重にも重なる迷路を抜けい出て、冷やかで流麗なる深淵な関係に、この手で触れる事を切望する。
ムーンシャインの女神は、俺の手でベールが剥がされるのを待っている。

だがムーンシャイン予想は俺でなく、Borcherdsによって証明された。

俺には思いもつかなかった証明の手法に、自分の限界を突きつけられ打ちのめされる。
頂点作用素代数を使っている。これは、現代物理学の超弦理論からの応用だ。
ムーンシャインの女神は、俺ではなく彼を選んだ。
俺は目標を失い、大学から去った。

たちまち俺は落ちぶれた。
生きる意味を失い、仕事をする気力もヒューマンスキルもない俺が、食べる事さえ困るのも簡単なこと。
肉体が意志を裏切ることを知ったのは、この時が始めてだ。
生きる気も無いくせに、気がつくと空腹に負けてスーパーの弁当に手を出して、店員に取り押さえられる。

でもこれは運命がなせる技だったと、今となっては思い起こせる。
スーパーの事務室でうなだれて座る俺の目の前に、ムーンシャインの女神が現れたから。

一分の隙もない姿と整った顔は、完璧な証明がそのまま具現化したような美しさ。
その瞳は、真理の静けさを映し出し、細い指は、何者にも侵されない冷やかさを秘めていた。
俺は慟哭したと思う。何か言っていたとも思う。が、もうそれはどうでもいい。
ただ覚えているのは、ムーンシャインの女神が目の前に現れた、喜びと陶酔。初めて解った、歓喜という言葉の意味。

しかしそのあとに来たのは、苦悩と焼けつく胸の思い。
人間の姿を象る彼は、所詮俺のものにはなり得ない。その姿を愛でる事さえ、ままならない。
ならば、女神と俺と2人だけの世界を構築しよう。
Borcherdsにも誰にも渡さない。俺だけの女神と2人の世界。

この3次元の世界では、俺は近づくことすらできやしない。
だが俺は、数学が記述し描くn次元の世界を知っている。俺にとって、証明済みならば実在するのと何ら変わるものはない。
実存すると信じる世界を、俺は思い描く。そして女神が俺の世界を知れば、2人だけの世界が完成する。
女神の中に構築する、俺の世界。他の何物も踏み込めない、2人だけの虚像の世界。

超弦理論に従うと、物質が統べるこの世界は、すべては11次元の弦で記述される。
世界を構成する素粒子も、世界を動かす量子力学の4つの力も、この「超弦」で出来ている。
11次元のうち7次元は小さく巻きとられ、その姿を現わさない。
俺は巻きとられ隠れた7次元を、夢想する。2人だけの世界にふさわしい、秘められた空間。
7次元。エキゾチックな球面を持つ特異な次元。28種類のゲージ場がある次元。28種類の世界を持つ次元。

そうだ。俺の世界を女神の中に築くため、俺は28の生贄を捧げよう。
女神は俺に生きる力を、目標を与えてくれた。



最初の一人は無我夢中で実行した。ただ捧げることが、目的だった。
だが俺の手の中で命が消える瞬間に、人の瞳に現れる情景に驚愕した。
思えば、こんな風に他人の内側を覗き込んだのは、人と真摯に向き合ったのは 初めてじゃないか?

命を惜しみ、嘆き、抵抗し、懇願し、俺を憎む。
しかし最後の最後に現れたのは、瞳の向こうに現れたのは..諦めなのか、乾いて冷たく澄んだ 静謐な世界。
ロジカルな思想に頼らなくとも、人の中にこんな世界があることを、その時俺は初めて知った。
女神の瞳を思い出すそれは、幾度見ても歓喜を心の内に呼び覚ます。
ああ、求める世界が、ここにある。

それからは、捧げること自体が喜びになった。
28の世界にふさわしく、28の方法で。
捧げるまでの工程は、汗と涎と糞便をまき散らし、あきれるほど流れた血と、最後に残る肉塊の、後始末を考えると溜息が出る。
拘束を解こうと力の限りもがき 声を限りに叫ぶ姿。肉体が生きようとする執着の、その生温かさと混沌に、毎回心底うんざりする。

しかし嘆きと悲しみと苦痛と憎悪が長くて深いほど、最後に命を手放す諦めは、冷たさと透明度と静けさを増す。
生贄の瞳はただしんしんと、その静謐な世界を完璧に映し出す。
俺はただそれだけを見たくて感じたく、うんざりも溜息も掃除の手間も我慢する。
瞳を思い起こす其のたびに、うち震える心を新鮮なまま幾度でも、俺はリフレインする。

最後の生贄まで辿りつけるよう、細心の注意を払い生贄を探し場所と手段を考え、実行した。
俺にとって警察を出し抜くなんて、ジュリア集合上での不変可測ベクトル場が存在しない証明に比べれば、簡単なこと。
余りの簡単さに、俺はお遊びを思い付く。

俺の肉体が滅びても、女神が俺の世界を忘れぬ様、時限爆弾を仕掛けておこう。
ちょっとしたプレゼント、生贄に添える甘いスイーツ。
時限爆弾を仕掛けるため、少年刑務所に慰問と称してもぐりこむ。そこでこの計画が正しい事を、数学の神が俺に証明した。
プレゼントの数は、10。俺の前で目を閉じて催眠に掛っている少年が10人。
「超弦」の、物質が統べるこの世界の、時間を除いた次元の数。
俺が夢想する巻き取られた次元と、この世界の次元を足した数。



今、看守が前の廊下を通り過ぎた。次に来るまでの余裕は、15分。15分あれば十分だ。

俺は洗面所の鏡の前に立つ。
胃に仕込んだナイフを、引きずり出す。

鏡の向こうに薪さんがいる。
俺の世界をうだうだ説明しても、分かるまい。
そもそも言葉で伝える事など、何もない。
ただ俺の脳の中の、28の生贄を見てくれれば十分だ。

薪さんの中に構築する、俺の世界。他の何物も踏み込めない、2人だけの虚像の世界。
俺は肉体を脱ぎ棄てて、薪さんの世界で共に永遠に2人だけ。

俺の女神。
俺のロジック。
俺のすべて。

俺の薪さん。

あい.して..る。

(完)



オリジナリティないこと、白状します。

今回は「ムーンシャイン」(円城塔 著)を読んでその世界に驚愕し、
ただただ「モンスター群」「ムーンシャイン予想」っていう言葉を使いたかっただけ、なんです。
いろいろ数学やら物理やら単語並べてますが、全然意味分かってないので見当違いなこと書いてます。

実は、前回の「萌え」も、同じ文庫収録の「あきば忍法貼」(倉田英之 著)を読んで思いつきました。

すんません、すんません。

この記事のトラックバックURL

http://sugiyamada1701.blog6.fc2.com/tb.php/168-8a598182

コメント

【 怖いです・・・・ 】
こんばんは、すぎさん。
このお話、ぞっとしました。

貝沼が頭が良かったのは本当だと思います。28回もの凶行を重ねる間、警察の目を逃れ続けたのだから、明晰な頭脳の持ち主でなければ不可能だと思います。

わたしはあまり頭がよくないので、ムーンシャインとかモンスター群とかチンプンカンプンなんですけど、
理性的に冷静に、残酷にひとを殺していく貝沼の様子を想像して、背筋がぞおっとしました。夏の怪談みたいです・・・・夜中には読めません。
さすがすぎさんです。きっと、この文体が冷徹な恐怖の感覚にあってるんですね。
怖かったです。

あ、例のブツ、受け取ってくださって、ありがとうございました。(^^)それと、サイトの件も快諾してくださって、ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。
【 Re: 怖いです・・・・ 】
しづさん、いらっしゃいませ~

> 理性的に冷静に、残酷にひとを殺していく貝沼の様子を想像して、背筋がぞおっとしました。夏の怪談みたいです・・・・夜中には読めません。

そうそう! 感情を込めることなく、何事も成せる冷たさを書きたかったんですよ。
ああ、さすがしずさん。 そこまで読み取っていただけたとは!

> きっと、この文体が冷徹な恐怖の感覚にあってるんですね。

そうだと思います。
なので、ほのぼのも、エロエロも、相思相愛も、幸せ薪さんも、私には書けないんですよ。
(と、痛い薪さんonlyの言いわけを、言ってみる)

> あ、例のブツ、受け取ってくださって、ありがとうございました。(^^)それと、サイトの件も快諾してくださって、ありがとうございました。

なんのなんの、こちらこそ恐縮です。

またお越しくださいね~

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

Template Designed by DW99

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。