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2次創作 「岡部と薪のエピソード 2」

毎度毎度ですが、すみません。 ナメクジ、よりもゾウリムシ更新ですね。
それで、独りよがりの話ししか出来ないなんて、最低な奴です。 




「気に食わないですね。」
俺は即答した。

「仕事上では、能力は噂以上だし人の意見を聞く耳も持っている。捜査員としては尊敬に値します。
 しかし人を人とも思わぬあの態度は、人間として最低です。」

「岡部くんは正直な人だ。なぜ薪くんが君を頼りにしているのか、納得したよ。」
「室長が俺を? それは絶対、田城さんの勘違いですよ。」

田城さんは前置きもなく、俺の質問に答え始めた。
「28人殺しの貝沼を知っているね。
 薪くんは貝沼の犯行、延いては第九の捜査員の死も、すべて自分が原因だと思っている。
 つまり間接的にではあるが、自分は32人を殺した殺人者だ、と。
 あの事件以来、自分に係る者に不幸にすると思っている節がある。
 だから、仕事以外で人との関わりを拒むんだろうな。怖いんだろう、繰り返すことが。
 それから...人並みの生活や 他人に気遣ってもらう資格が自分にはない、とも言ったことがある。」

俺は何か言いたくて口を開けたが、何も言葉が出てこない。

「薪くんはあの犯行の1年程前に、1回だけだが貝沼と遭っている。
 たまたま貝沼が万引きした現場に居合わせ、温情でそれを見逃した。
 第九の捜査では、貝沼の犯行は動機が判明していない。また、薪くんが動機に
 かかわっていることを示す画も見つかっていない。
 にも関わらず、薪くんは自分が犯行の動機に関わっていると、ほぼ確信している。
 直観...なんだろうねぇ。」
田城さんは煙草を揉み消した。

「そんな...。
 たった1回たまたま遭っただけで、何故そこまで思い込むんです?」

「貝沼は、”生きる希望が湧いてきた”と言ったそうだ。
 私はそれを聞いても納得できないが、その時の貝沼の言動に、薪くんにはなにか
 ピンと来るものがあるのだろう。」

田城さんに片手で拝まれて、俺は煙草をもう一本差し出した。
火をつけると、ふうっと溜息とともに煙を吐き出し、たなびく煙の行方を追う。

「百歩譲って言う通り、動機に関わっているにしても、薪くんにはなんの責任もないんだがなぁ。」

煙が排気口にすうっと吸い込まれると、俺に視線を戻した。

「貝沼の犯行の誘発した思いや、鈴木くんの射殺の自責の念で、薪くんはPTSDを発症している。」

「PTSDって、心的外傷ストレス症候群のことですか。」

「ああ、君も思い当たるだろう?
 不眠、怒りの爆発、他者との交流の遮断、そして感情の萎縮。
 第九再開以降、薪くんは貝沼事件や第九の一連の事件には、一切触れようとはしない。
 ましてや、一連の事件に対する悲しみや怒りなどの感情を、表すこともない。」

「...」

「私は後悔しているんだよ。
 MRI捜査がひっ迫してるとはいえ、薪くんに事件を消化する時間を、与えて遣れなかった。
 仲間の死を悲しむ時間を、与えて遣れなかった。」

「...」

「カウンセリングを命令したが、何も話さない。
 本人の協力がなければ、カウンセラーも打つ手がない。
 薪くんが事件を振り返ることが出来る様になれば、いいんだけどねぇ。」

田城さんは、さて とつぶやくと煙草を消し、と喫煙室のドアを開けた。
そのまま、思い出したかのように俺を振り返る。

「PTSDはともかく、薪くんと貝沼の関係を話したのは、君が初めてだよ。
 なんでだろうねぇ。岡部くんには、話しておいたほうがいいと思って。」

「室長は俺を嫌ってますし、俺の言うことなぞ百の一も聞きませんよ。」

ふふふ、と田城さんは薄く笑った。
「薪くんの臍は、背中についているから。
 私には 薪くん、君を頼りにしているように見えるよ。
 じゃ、お先に。」



「..室長、あのー たまには何か食べた方が...」
「フン」

曽我が恐々室長に食事を勧めるのは、室長は気遣われることが大嫌いであることを、知っているからだ。
ほぼ99%無視されて、残りの1%は鼻で笑った鼻息が帰ってくる。


「室長。そろそろ休んでください。」
「五月蠅い。おまえの指図は受けない!」

俺が室長に休憩を勧めると、100%怒号が帰ってくる。室長は俺を嫌っていると判断する、由縁である。
俺も怒号には慣れてきて、このぐらいで引き下がるならば、最初から言いださない。

「しかし..。また倒れて、俺が何かしたと思われちゃ、かないませんから。」

「もう倒れるなんてことは、しない!」

「そんな無茶な言い方ありますか。倒れたくて倒れるやつなんかいませんよ。」

「それよりも、被害者の一か月分は見終わったのか?」

「話を逸らさないでください!
 どうして室長はそう自分の事となると、素直じゃないんだ。」


何回か同じような衝突を繰り返したある日、俺はつい思っていたことを言ってしまった。

「貝沼の犯行は、室長のせいじゃない。たまに休んでも、だれも室長の事、責めませんよ。
 ましてや、俺が室長を心配しても、俺に何かあるなんて絶対ありえない。」

室長は虚を突かれたように、目を見張る。

「な、なんのことだ。」

ああ、言うつもりは無かったのに。室長は個人的な話を一番嫌うから、面倒な事になりそうだ。
しかし、一度出てしまった言葉は、もはや取り戻せない。

「田城さんから聞きました。室長と貝沼との事、貝沼の犯行を室長がどう捉えているか。」

「田城さんもよけいなことを...くそ!
 田城さんから聞いた事など、忘れろ。おまえは捜査に専念すれば、いいんだ。」

そう言い放つと、逃げるように室長室向かう室長に、俺も続く。
部屋に入ると、俺の存在を無視するかのように、椅子に座り書類をめくり始めた。その机に、音を立てて両手を突く。

「ならば、専念出来るようにしてください!
 室長を見ていると、気が気じゃない。室長が倒れたら、それこそ捜査が滞りますよ。」

「ぼくなぞ見なくてもいい!」
室長は立ち上がり、同じようにバシッと両手で机をたたくと、俺を睨みつけた。
「ぼくは、人殺しだ。田城さんから、聞いだろ!」

血を吐くように、叫ぶ。
「ぼくが貝沼を見逃したから、貝沼に犯行を許してしまった。
 ぼくが第九に居たから、ぼくに見せるために、あんなにたくさんの少年が、死んだ。
 ぼくが無能だから、第九の部下を一人も助けることが出来なかった。
 ぼくがこの手で、鈴木を殺した。一番の親友を。」

声に勢いがなくなり、最後にはがっくりと椅子に座りこむ。
「ぼくが... ぼくが...殺したんだ。」

いつしか両手を目の前に上げて、両手の平を眺めている。
その両手を、俺の前に突き出した。
「岡部、見ろ。血にまみれている、ぼくのこの手を。
 この手から、聞こえてこないか?
 明るい未来を奪われた、無念の言葉が。
 最愛の人を失った、両親や恋人の慟哭が。
 無残な最期に放たれた、悲鳴が。
 親友に殺されなければならなかった、驚愕が。
 自ら命を絶たなければならなかった、悔しさが。」

室長は両肘を机に突き、組んだ両手に俯いた額を当てる。
俯いたため、くぐもった声で言う。
「部下を、親友をすべて失った、ぼくの悲嘆が。」

顔は見えない。机にぽつりぽつりと落ちる涙と、かすかに震える肩が、すべてを表す。

俺には、何も言うことが出来ない。
手近な椅子を引き寄せ、机越しに室長の前に座る。
ただ机上に溜まる涙を見つめ、同じ空間に存在し、室長の思いを感じていた。



こんな事を何回か繰り返し、室長が基本的な日常生活を取り戻すには、数か月の時間を必要とした。

(完)





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コメント

【 薪さん・・・(;;) 】
こんにちは、すぎやまださん。
つづき、ありがとうございます。

岡部さんが薪さんのこころをだんだんに癒していった・・・・
実際、こうだったと思います。原作に描かれてはいませんが、あのどん底から薪さんを救い上げたのは、岡部さんだったと確信します。青木くんと出会ったときには、少なくとも恒常的に幻覚に悩まされているようには見えませんでした。いくらかは回復傾向にあったと思われます。

たった5ヶ月くらいの間に、薪さんを表面上だけでも取り繕えるくらいに癒したのは、やっぱり岡部さんだったんですよね。でなかったら、あのふたりの絆はありえないです。なんのかんの言っても、薪さんは岡部さんを頼りにしてますもの。

薪さんが自分の手を見て、岡部さんに心情を吐露するところはもう・・・・・胸が痛い・・・・・でも、こんなふうに口に出すことで、こころの傷は癒えていくと・・・・・そう、信じます。

久しぶりに好物の薪さんを堪能しました。(すいません、鬼で(^^;)
ありがとうございました。


【 Re: 薪さん・・・(;;) 】
いらっしゃいませ~ しづさん。

> 岡部さんが薪さんのこころをだんだんに癒していった・・・・

そうなんですよね。 岡部さんが居てこそ、第九存続も実現したのでしょう。 
(実際には聞き役でもある程度の知識がないと、2次受傷で傷が深くなってしまう危険性があるようですが)

> たった5ヶ月くらいの間に、薪さんを表面上だけでも取り繕えるくらいに癒したのは、やっぱり岡部さんだったんですよね。でなかったら、あのふたりの絆はありえないです。なんのかんの言っても、薪さんは岡部さんを頼りにしてますもの。

激しく同意、です。
しかし岡部さん、しづさんところでも うちんところでも、見返りがない。
薪さんが気になって、気になって というそれだけで、ここまで薪さんを支える岡部さん....

> 薪さんが自分の手を見て、岡部さんに心情を吐露するところはもう・・・・・胸が痛い・・・・・でも、こんなふうに口に出すことで、こころの傷は癒えていくと・・・・・そう、信じます。

私も、信じたいです。

> 久しぶりに好物の薪さんを堪能しました。(すいません、鬼で(^^;)

(鬼の)しづさんに「好物」と言ってもらえるなんて、最上級の褒め言葉頂きました。
ありがとうございます。

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