FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2次創作 「交響曲第9番 Op.125」

やはり年末は第九、です。

合唱を聞いて、歓喜に震える圧倒的に幸せな薪さんを書きたかったんですが...
なんで、こうなってしまうんでしょうね。





岡部が第九に来てから、4か月が過ぎようとしていた。
最初は、室長一人と右も左も分からないお荷物が3人で、第九はまったく研究室の体裁を成していなかった。
しかし岡部達がMRI捜査に慣れてくると、第九はなんとか以前のように回りだした今日この頃。
もう人を増やしても大丈夫であろうと、もう年の瀬も目前なのに、急遽今井が配属された。

そんなある日、室長室で捜査の状況報告をし終えた岡部が、机上に広げた資料をまとめながら薪に尋ねた。
「室長。今井の歓迎も兼ねて忘年会をしようと思うのですが、空いている日はありますか。」

すでに岡部の為に中断した仕事を再開していた薪は、視線をモニターに置いたまま返事をする。
「いや、ぼくはいい。おまえたちだけで行け。」
「...」

岡部は何か言いかけたが、もう岡部の事など眼中にない薪に、結局無言で一礼し踵を返した。
しかし、室長室を出る扉の前で立ち止まる。少し迷った末、机を挟んだ薪の正面に引き返した。
「薪さん。」

ん? とすでに退室したとばかり思っていた岡部に、薪は不審顔を向ける。
用件に心あたりがない事もあるが、岡部が「薪さん」と名を呼ぶ時は、業務とは一線を引いた話であることが多い。



「えー、差し出がましいですが。」
岡部が、がしがしと頭を掻く。

「たまには酒の席で部下と親睦を深めるのも、上に立つ者の役目ですよ。」

岡部の言い様は仕事にかこつけているが、その目は不肖な上司を諌めるというより、案じる色の方が濃い。
"薪さんの仕事ぶりは、常軌を逸してます。たまには息抜きが必要ですよ。
 せめて仕事にこじつけないと、聞く耳すら持たないですからね。薪さんは。”

薪は岡部の顔を数秒眺めると、気弱げに瞳を机上に落とす。
しかし次の瞬間、薪が上げた瞳は強い怒りを湛え、岡部を睨んだ。
「親睦を深める必要など、ない。それともおまえは、上司と親しくならないと捜査が滞るのか?」
「そういう事を言っているのではなく...」

言い繕う岡部を遮る様に、薪が言いつのる。
「忘年会など考えている暇があるのか、岡部。
 今井は警視だ。第九のキャリアは岡部の方が長いから先輩づらも出来るが、ヒエラルキーでは警部のおまえは今井の下だ。
 歓迎会だと? 先輩づらするなら、それなりの階級になってからにしろ。」

岡部は二の句も継げず、黙りこむ。第九では唯一ノンキャリアの岡部にとって、たしかに階級は一番痛い所。
しかし岡部が絶句したのは、その由縁故ではなかった。

”薪さん、またそういう、嫌われることをわざわざ口に...”
 
投げつけられた言葉ではなく、投げつけた薪の心情を慮る。
いや、薪の心情など分かりはしない。唯一分かることは..構うなという薪の叫び。

薪は嫌みを言う事は多いにせよ、それは明らかにからかいで、平素は人の心に爪を立てるような事はない。
なのにこんな時は、確実に相手の心を抉る言葉を浴びせかけ、決して人を寄せ付けない。

目の前の、熱く冷たい薪の両肩を掴み揺さぶりたい。自暴自棄は止めなさいあなたこんなに辛いのに、と戒めたい。
岡部の内に、そんな激情が駈けめぐる。
しかしそれは、薪の望みとは真逆の事で。そんな事で薪が好転するとは、とても思えない。

他のやりようも思いつかず、岡部は薪に背を向けた。背の影でそっとため息を吐くと、室長室を後にした。



扉がぱたん と閉まる音を合図に、薪が閉じた扉を凝視した。
しかし振り切る様に目を反らすと、さっきまで背にしていた窓の前に立つ。

”岡部、おまえは...
 何度も何度も懲りもせず、どうして...ぼくを案じるのだろう。”

瞳を伏せ、両の拳を握る。唇を噛むと血の味がする。その痛みで贖罪という言葉が頭に浮かび、それが余計に腹立たしい。

”だからぼくは、幾度でも幾度でもおまえを...傷つけてしまう。”


外はすでに、とっぷりと暮れている。明るい室内に窓は部屋を映す鏡となり、外はまったく伺えない。

”これでいいのだろう? ぼくはもうおまえだけのものだ。だから..ここに居ろ。何処にも行くな。
 もう誰も殺すな。”

窓には、薪と薪の背後が映しだされている。
ガラスに映るのは、自分を睨みつける自分の顔。
そして、先ほどまで岡部が居たその奥の、定かではない影。
定かではないはずなのに、その口が声なく呟く。消え入る様に囁く声は、シンクロする薪の唇から発していた。

「まきさん。あいしているよ...」

(完)




フロイデ!な貝沼さん、になってしまいました。




この記事のトラックバックURL

http://sugiyamada1701.blog6.fc2.com/tb.php/195-609b89da

コメント

【  】
こんにちは、すぎやまださん。

あの‥すぎやまださんの歓喜に震える圧倒的に幸せな薪さんて‥て‥
今まで‥あのーー‥私の読み込み不足かもしれませんが‥ありましたか?!
‥記憶が‥きっとあったんですよねっ!
私が忘れたか、読ませて頂いてないだけですよね!
きっと‥そうに違いありません!‥‥‥‥

でもこういう薪さん‥嫌いじゃないです‥
やっぱりどんなに嬉しい、楽しいことがあっても
薪さんの心の奥深く流れる暗く淀んだものが
清流にはなりえないのでしょう‥きっと‥
だから、すぎやまださんの薪さんに惹かれてしまうのだと
思ってます。‥癖になりそな痛い薪さん‥ふふふ‥

あっ、でも宇野さんには癒されてると‥絶対的に癒されてると
思ってるんですけど‥

‥添い寝ですみそうにない‥って‥どどどどどんなですか?!
添い寝以上って‥いったい‥
見たい‥添い寝以上を見たいです‥すぎやまださん‥お・ね・が・い‥
気持ち悪くてすみません‥

あっ、先日は助かりました。ありがとうございました!
ruruでした。

もう一言‥宇野さーーーーん!!‥以上でございます。
失礼いたしました。
【 Re: タイトルなし 】
いらっしゃいませ~ ruruさん。 返事遅れてごめんなさい。

> あの‥すぎやまださんの歓喜に震える圧倒的に幸せな薪さんて‥て‥

いやいや 幸せな薪さんなんて、私のブログに存在しておりません。
なので、たまには幸せになってもらうおかな~と思ったんですが...

幸せな薪さん...ちっとも思い浮かばない!
で、貝沼さんが喜んでしまいました。

> 薪さんの心の奥深く流れる暗く淀んだものが
> 清流にはなりえないのでしょう‥きっと‥

そうなんですよね。
ただの綺麗なおっさんだったら、ここまでのめり込まないですものね。

> ‥添い寝ですみそうにない‥って‥どどどどどんなですか?!

え? そんな事言ってしまったか...な?
添い寝以上にいいことって..う、私には難しい..

> あっ、先日は助かりました。ありがとうございました!

いえいえ、どういたしまして。

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

Template Designed by DW99

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。