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2次創作 「妊娠要綱 2」

忘れたころに..すんません、すんません。

もう少し面白くなるかな、と思ったんですが..すんません、すんません。






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約3ヶ月後、薪の卵子の用意が整ったと連絡が来た。
同時に、岡部にも出頭命令が下った。薪が精子提供者として、岡部の名を申請した為だ。

倫理道徳に関して一般常識から髪一筋もはみ出したことがない岡部を、薪がどのように説得したかは、本題ではない。
ドナーからの採取方法は今も昔も変わらぬが、岡部が何を縁(よすが)に自らの精子を提供したかも、聞かぬ方が良かろう。

とにかく岡部の精子を受け入れた薪の卵子は、3日後に羊膜や胎盤様組織とともに、薪の腹腔内に移植された。
数日の経過観察でも問題なく妊娠は継続し、無事に退院した薪は翌日には第九へと復帰した。





「薪さん! もういいんですか? 大事をとった方が....」
常と変わらぬ姿で登庁した薪に、一番に気がついた岡部が叫ぶ。
ちらりと岡部に当てた視線を殊更に反らし、あらかさまに無視を決め込んだ薪は、無言のまま室長室へと消えた。

「おお怖~。薪さんの腹の事、絶対に話題にするなよ、曽我。おまえ空気読めないから、一応忠告しておくぞ。」
「小池こそ、口をすべらすなよ。おまえ、本当にタイミング悪いんだから。」
露骨にではないにせよ興味津津であった面々は、改めて好奇心より第九の平和を選択することを、確認し合った。
岡部を除いて、は。



「薪さん! きちんと食事を取ってください。あたな一人の身体じゃないんですから。」
「お、おまえ..。恥ずかしい奴だなぁ。そういう懐メロドラマのような事が、よく言えるものだ。」
「ああ、またそんなおにぎり一個で昼を済ませて。言われたくなかったら、言われないようにしてください!
 せめてこの弁当を。揚げ物は残していいですから、野菜は全部食べるんですよ。」
毎昼休み室長室で繰り広げられた岡部と薪の攻防は、正論で岡部の勝ち。


「例の観点から昨日の行動を見直し..うっ!」
モニター席に座る岡部に話しかけた薪は、急に口元を押さえるとばたばたとモニター室を出て行った。
「ま、薪さん。なんか悪いもんでも...」
おろおろと心配する岡部に、今井が言った。
「岡部さん、ありゃつわりです。腹が減るとひどくなるみたいだから、何かつまむものを用意しておくといいですよ。ビスケットとか。」
「ほお~。さすが経験者は違うなぁ~。今井が経験したわけではないけれど。」 と岡部は感心しきり。
人生経験の豊富さで、今回は今井の勝ち。


「検視結果を聞きに行くだけだ。いちいちついて来るな。」
第1に向かう薪の後を、岡部は懸命に追いかける。
「でも、なにがあるかわかりませんから!」
たしかに天災は、思わぬ時にやって来た。
「誰か止めて~」という叫びに振り返ると、2人に向かって猛スピードで迫るのは、出前のコーヒー用ワゴン。
薪の前に大の字で立ちはだかった岡部に、がっしゃーんとワゴンが衝突し、岡部に襲いかかるカップとソーサとスプーンの雨。
熱々のコーヒーはわざわざポットから飛び出して、岡部の全身を濡らした。「あちちちち」
ああ散々だけれど、薪さんが無事でよかった、と床に転がったまま見上げた薪の瞳は、冷たい。
「あのぐらい、避けることができる。わざわざ止めようとするお前は、ばかだ。」
冷静な薪に比べ、つい体を張ってしまった、岡部の負け。





最初は大騒動した薪の妊娠も、数か月たつとすっかり日常に埋没する。



お腹が少し目立ち始める頃から、薪はしきりに眠たがるようになった。
いつの頃からか、昼休みは室長室のソファで横になるのが日課になった。

昼休み、岡部は薪を起こさぬ様に室長室に入ると、急ぎ仕上げたレポートを机上に置いた。
足音を忍ばせつつ退出しようとした岡部は、薪の姿を目にしてふと立ち止まる。
そのままソファに近づくと、薪の足元に軽く腰を下ろした。
肘を膝に突き両手を組み斜交いに、その寝顔を何気に眺める。

いつもなら人の気配だけで目を覚ます薪が、岡部がソファを揺らしても視線を向けても気づかない。

仰向けに寝ころんで横を向いた薪の顔は、さらりと流れた髪で薄く開いた口元しか見えない。
しかし緩やかに上下する胸と、膨らみかけた腹に無造作に置かれた両の手の様子から、安らかに深い眠りが伺える。
本来の姿ではないにせよ、生ある物の根底にかかわる事を成す為に、概念ばかりが先行し疎かにされてた肉体が主権を取り戻した。
その肉体が要求する休息に素直に従う今の薪の姿が、とても健やかに見え、岡部はひどく安心した。

きっと不機嫌そうな額の縦皺は平らかになり、閉じた瞼はゆるりと寛いで居るのだろう。
髪を掻き上げ確かめなくとも、岡部にはその様子が脳裏に描くことができる。
この安寧が永遠に続けばいいのに..。
まるで子供のように無邪気に、叶うべくもない事を願う自分を、ふと笑う。でもそれは心の底からの真摯な、願い。



始業を知らせるチャイムが鳴った。
薪が身じろぎをする。うーんと両手を伸ばすと、ぱちりと目が開いた。
「ん? 岡部。どうした?」
まるで自分が起きるのを待っていたかに見える岡部に、薪が問う。

「例の件、レポート上げました。」 岡部は顎で、机を指す。
それで目的は果たしたはずなのに、動こうとしない岡部に薪の瞳が疑問符を投げた。
「いえ。薪さんの気持ちよさそうな昼寝っぷりが、なんだかとても嬉しくて。俺まで幸せ..」
あ、なんて恥ずかしい事を臆面もなく俺は言ってしまったんだ、と岡部の顔が熱くなる。

狼狽し、さて仕事仕事 と立ち上がろうとする岡部の手首を、薪ががしっと掴んだ。
ひ! っと心中上げた岡部の悲鳴が聞こえたように、見上げる薪の顔がにやりと笑う。

「おまえ、幸せごっこが好きそうだな。ならばご期待にお応えしよう。」
ほら、胎動が始まったぞ、おまえの子だ、と掴んだ岡部の手のひらを、そのまま自分の腹に押しつける。

こ、このスチュエーション。子供を待ち望んだ新婚の若夫婦が、ハートいっぱい夢いっぱい。
お腹に手を置いたまま目を合わせ、この子は2人の愛の結晶...
薪さんに俺の子供を産んでもらうのは、俺が望んだ訳ではないし。
そもそも、俺と薪さんは新婚いやいやいやいやいやいや男同士でそういう仲でもないわけで。
俺は美人な女性が大好きだし、でも薪さんほどの美形は確かに希少。
薪さん似の女の子が生まれ大きくなったら、自制できるかなぁ。大きくなっても、一緒に風呂入ったりして。
まてまて、警察官ならば常に世間の模範たるべし、だ。この仕事好きだろ? 辞めたくないだろ? だったらがんばれ、俺。
ああ俺はなに考えてるんだ~。

座ったまま思考が熱暴走中の岡部を覗き込むように、薪は念を押す。「ほら、また動いたぞ。」
促されて手のひらに意識を向ければ、たしかに薪の中で何者かが動いている。ふーん、これが胎児なのか。

「ぼくの体内に、ぼくの意思とは異なる意志を持つ存在がいる。お前とぼくの子だ。」
と薪が言えば、たしかに此処にいると岡部はうなずく。


「しかし、卵子を作るまで数カ月、その間に細胞がレトロウィルスに感染したとしたら、どうなるか。
 レトロウィルスの転写酵素により、DNAが一部差し替えられる事がある。そのキメラDNAは、もはやヒトでないかもしれない。
 転送装置に蠅が紛れ込んでしまった、蠅男の様に。」
岡部は手を添えた薪の腹を、見た。

「いまぼくの腹で動いているものは、実はお前にもぼくにも似つかぬ、化け物かもしれないぞ。
 そして7カ月を待たずに...
 ある日、ぼくの腹を内側から噛み破り、自らの意思で生まれてくるかもしれない、な。」
岡部は思わず手を引こうとするが、手首を掴む薪の力は意外に強い。

「噛み破られたぼくの腹の中から、化け物がおまえを”パパ”と呼ぶやもしれぬ。」
この手の話に弱い岡部は、すでに顔が青い。
薪の中のものは、その化け物であるかのように岡部には思え、ぐるぐると動く様さえおどろおどろしい。
今すぐに「キー」と鳴きながら、手のひらを突き上げてくる気さえする。

「うっ! 岡部! お、お腹が...」
いきなり薪が苦悶の声を上げ、腹を押さえた。
ぎゃっ と岡部は薪の手を容赦なく払い、立ち上がり逃げようとする。
しかしあせった体は言うことを聞かず、足がもつれて無様に倒れこみ、したたかに腰を打つ。

岡部のその様子を、何事もなく立ち上がった薪が見下ろした。
その顔は至極満足げに幸せそうで、打った腰をさすりながら岡部は、こんな幸せそうな薪さん俺はちっとも嬉しくない、と思った。


(続)


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コメント

【 きゃははは! 】
面白い、面白いですよっ!
これ、やっぱり相手が岡部さんだから面白いんですね。薪さんの容赦ないイタズラ小僧っぷりが最高です。(^^

あー、でも、薪さんが健やかに眠ってくれると、本当にうれしいですね。
岡部さんと一緒に、わたしも幸せな気分になりました。
うたた寝とかじゃなくて、安眠してくれる薪さん。原作でも見たいなあ・・・・・。

【 ぎゃはははは 】
うん、やっぱりこれは、青木じゃなくて、岡部さんでしょ(^^)
続き、続き、続き…。
【 面白いです! 】
おはようございます。すぎさん☆

うわ~薪さん、何だかとっても楽しそう♪

岡部、頑張っているのに、ちょっと気の毒(^_^;)
ああ、彼は頑張っていませんね。無意識ですよね。

面白過ぎるお二人さん、どうかお身体大切に。
特に岡部!
気苦労と生傷が絶えなそうです(^_^)

【 Re: 面白いです! 】
どうもです~ たつままSん

> うわ~薪さん、何だかとっても楽しそう♪

とても楽しかったようですよ。

> 岡部、頑張っているのに、ちょっと気の毒(^_^;)
> ああ、彼は頑張っていませんね。無意識ですよね。

一生懸命薪さんを気にかけているんですけどね。
まったももって、報われない...

またお越しくださいね~
【 Re: ぎゃはははは 】
まいどです~ めぐみさん

> うん、やっぱりこれは、青木じゃなくて、岡部さんでしょ(^^)

そうそう、岡部さんじゃなきゃ、面白くないんですよ。

> 続き、続き、続き…。

つ、つづき...ちょっとリアルが立て込んでて (と言い訳)
気長にお待ちいただければ、というか続けることができるのか?

【 Re: きゃははは! 】
まいどです~ しづさん

> これ、やっぱり相手が岡部さんだから面白いんですね。

そうそう、岡部さんのいじめられっぷりが良いというか、情けないのが似合うというか。

> うたた寝とかじゃなくて、安眠してくれる薪さん。原作でも見たいなあ・・・・・。

幸せな薪さんいいですよねぇ。
だけど、薪さんってどんな幸せを一番望んでいるんだろう? 
思いつかないんですよ。 

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