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2次創作 「フラッシュバックVer2.0 3」

すでにupした「フラッシュバック」の焼き直し、最後です。
なんか最近、ワンパターンですな。私の脳内妄想岡部さん。
お話の最後に、specal thanksあります。


そうだ、今日は金曜だったな。
いつもは帰りがけに寄るから夜になるが、たまには昼間に薪さんに会ってこようか。
最近は珍しく暇だし。午前中の予定も特に無いしな。

岡部は出勤途中で、薪のところへ寄る事に決めた。

川べりにあるその場所は、駅から歩いて20分。
堤防の上を歩くと、冬のキンと引き締まった朝の空気が 気持ちいい。
息は真白く立ち上るが、風がなく全身を太陽にさらしているので、寒くはない。
まだ朝の日差しは低く、川面はキラキラと輝いて。
その中を、とりとめなく思いを巡らしながら、歩いていく。

薪さんに会いに行くのは、俺がたいてい金曜で、田城さんが たしか...決まって火曜。
田城さん もう年だから、薪さんの相手も大変だろうに。
そういえば 田城さん、そろそろ定年退職が近かったと思うが。
できたら、このまま副所長を続けてくれると、俺も第九室長としてやり易いんだがなぁ。
第九への強い風当たりを うまくさばくのは、どうも俺は苦手だ。

歩く道のその先に、白い小さなものが無数に舞っているのが見えている。
ユリカモメが群れているようだ。
その中心に、人の姿がある。
そういえば薪さん、毎朝パンを投げてやってる と言ってたな。

近づくに連れて、様子がはっきりしてきた。
折り重なった翼のすきまから見え隠れする、パジャマの上にコートを一枚羽織った格好。
空を仰いだ姿勢のまま、パンを真上に何度も放り投げる。
ユリカモメはぎゃあぎゃあ鳴きながら、器用にすべてをキャッチする。
大きな一片を手に持ったまま、差し上げた。
手すれすれにパンをもぎ取り飛び去るカモメを、何とか触ろうともっと指を伸ばしている。

薪さん。

「あ、岡部」
声に気づいた薪さんが、駆け寄ってきた。
その勢いのまま、俺にぱふっとしがみつく。
後ろによろけながら、薪さん 気持ちは子供でも体は大人なんです、重いんですよ、と思う。
おまけに、なんでいつも俺だけ呼び捨てなんですか。
呼び捨ての方が、俺も嬉しいんですけどね。

「今日は早いんだね」
だきついたまま俺を見上げる。屈託無いその笑顔を見ると、いつも胸が少し痛む。
以前の薪さんなら絶対見せなかった、一片の欠けもない 花のような笑顔。

「先週、田城さんがチェス盤を持ってきて教えてくれたよ。
 岡部、知ってる? チェス。 ねえ、やろうよ」
やっと追いついた看護師の佐藤さんが、口をはさむ。
「遊ぶのは、着替えてご飯たべてからね」
「なら、岡部と一緒に朝ごはん食べてもいいでしょ? 佐藤さん」
と、薪さんは佐藤さんを振り返った。
「いいですよ。だけと一人分しかないから、半分こ してくださいね」

「岡部、早く食べてチェスしよう」
薪さんは俺の手を引っ張りながら、堤防の階段を足早に降りて行く。
田城さんも考えたな。薪さんお気に入りの バスケの相手は、さすがに辛かったんだろう。
チェスなら 薪さんも気に入ったみたいだし、田城さんも楽だし。

着替えをする薪さんを、病室の前の廊下で 壁にもたれて待つ。
ここにいると、担当医師から病状説明を受けたときの事を思い出してしまう。
その時は、早く前の薪さんに戻って欲しい一心だったが、今の薪さんの笑顔を見ると
このままでもいいような気がしてきた。

「心的外傷による退行が顕著ですね。薪さんの場合、現状で10歳程度だと思われます。
 ここまで退行するのは珍しいですが、この年齢が 薪さんが安心できる時代なのでしょう。
 薬物治療も試みましたが、過度の覚醒による混乱が現れるので、中断しました。
 時間をかけて精神療法やEMDRで、辛い記憶との折り合いを探る治療方針をとっています。
 ただ薪さん自身の 元に戻りたいという意思が強いようで、あの事件も含めた記憶を
 よみがえらせようと、無意識に試みているようです。
 そのためか、時々発作的な解離性昏迷が起こります。
 それがなければ、退院していただけるのですが。
 予後は...申し訳ないですが、私にも分かりません。
 辛い記憶と折り合いがつけば、外傷前に戻ることも可能ですが、
 このままの状態で寛解となるかもしれません」

辛かったことは忘れたままでいいんですよ、薪さん。
やり直せばいいんです、何回でも。
俺はいつでも、薪さんの側にいますから。

早く朝飯食って、チェスしましょうか。

(完)




specal thanks

・このお話は、かのんさん「この世界を愛したくて 」 の名作 二次創作「記憶」  を読ませていただいたおかげで誕生しました。
 かのんさん、素敵なお話 ありがとう。
 青木さん殺しちゃって、ごめんなさいね。

・かのんさんの「記憶」 を生かすきっかけとなったのが、第九の部下Yさんのコメントです。 
 素敵なコメント、ありがとう。

・で、最後の痛い薪さんは、みちゅうさん[「秘密のたまご」 の名作 「ひみつのひみつ」 
 をパクってしまいました。
 (みちゅうさん、ごめんなさい。だけどほんとうっに素敵だったから)
 2歳半の薪さんも痛いけど、10歳の薪さんも痛いぞ。おまけに戻らないし。(完)ですから。

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コメント

【  】
何だろう。
辛いのかな。
悲しいのかな。

でも、薪さんが泣いてないから、良かったのかな。

でも、本当は泣きたかったんじゃないのかな。
泣くことも出来なかったから、こうなったのかな。

初回の恐さ。
前回の衝撃。
そして今回の余韻・・。

素晴らしい物を見せていただきました。

でも・・・・・・・・

薪さん・・・・・・・・・・・・

今、パソの前で泣いてる私です。
【 青木さん!!!! 】
きゃ~~~!!!
青木さんになんて事を!!!

いや、前回でね、頚動脈いっちゃってるな、助からないな、とは思ったのですよ、
しかし、そこはそれ、すぎさまの魔法でね、助けていただけるかと……そしたら……
 
青木さ~~ん!!!いや~~~殺さないで~~~せめて、出家にして!!

退行して痛い薪さんはぐっときますが、青木さん、青木さん…ああ、私って、青木さん、好きだったんだ~~

泣いちゃいましたよ、もう、
(取り乱してすみません)
【 T_T 】
おじゃまします

>・かのんさんの「記憶」 を生かすきっかけとなったのが、第九の部下Yさんのコメントです。 
 素敵なコメント、ありがとう。

どどど、どーもいたしまして、です。
すぎやまださんの妄想の翼を羽ばたかせることができて光栄です@@;;)

それにしても、青木は死ぬし、薪さんは退行するし、、、「ひみつのひみつ」みたいに復活してほしいけど、青木いないし・・・。う~ん、う~ん、う~ん。

原作がこんな結末になりそうな選択肢もありそうで・・・。
どんな展開になっても、岡部さんは絶対に壊れなさそうなところが、岡部さんの役割のつらいところですね。

「うそが下手」な岡部さん、確かに室長職は苦手でしょうね。

【  】
こう来ましたか~~~。
ん、これと似た話が?と考えたら、一条ゆかりの『デザイナー』でした。
あれもラスト、確か10歳くらいの少年に戻っちゃって、やっぱりちょっと強面の世話役みたいのがいたんですよね。
思い出したら、急に笑顔がだぶりました(;_;)
岡部さん的にはある意味、ハッピーエンドなのかなあ…。
しかし青木…可哀想すぎる(TT)(TT)(TT)
【 Re: タイトルなし 】
いらっしゃいませ。かのんさま
いろいろなこと感じていただけて、多謝です。

書いたらすぐにupする私にしては珍しく、この3だけは数日寝かせて、手を入れてました。
書いてる本人もちょっとウルウルしながら。

読んで頂き、本当にありがとうございます。
【 Re: 青木さん!!!! 】
いらっしゃいませ。みちゅうさん

頚動脈ズバッといったら、助けるなんてそりゃ無理ですわ。
ごめんなさいね。青木さん殺しちゃって。

でも青木さん、みちゅうさんの所で とても幸せそうですよ。
こっちのお話は夢だった、ということで。
ダメ?
【 Re: T_T 】
まいどです。

> どんな展開になっても、岡部さんは絶対に壊れなさそうなところが、岡部さんの役割のつらいところですね。

おお、そこも感じていただけましたか! うれしいです。
岡部さんは岡部さんで、絶対後始末が大変だったはずです。
おまけに第九室長まで背負ってしまって。

薪さんに会うことで、自分も癒されているはずです。
岡部さ~ん。
【 Re: タイトルなし 】
まいど~。

> ん、これと似た話が?と考えたら、一条ゆかりの『デザイナー』でした。

あ、あれの最後ってこんな感じでしたか。
一条さんもきれいな絵を描きますものね。

> しかし青木…可哀想すぎる(TT)(TT)(TT)

めぐみさんの所で、青木さんがんばっているじゃないですか。
(しかし、薪さんのじゃまばかりする、青木さん)
【  】
再びお邪魔致します。

昨日は、感情が高ぶってしまって。

最初に読んだ時は、衝撃を受けつつも、呆然として、涙も出なかったんです。
しばらくしてから、もう一度改めて読んで・・そして、自分でも感情の整理がつかないまま、コメントを書き始めて、そのコメントを書き終える頃になって、急に、ぶわ~~~っ・・・と、感情と、涙とが、こみ上げてきたのです。

最初に読ませていただいてから、かなり時間差で、後から感情が溢れてきました。

泣きながらコメント送信して、後はパソを前に声を上げてしばらく泣きじゃくってしまいました・・

それ位、感情が揺さぶられて、たまらなかった。

自然と頭の中でアニメエンディング曲の「煙」が流れたりもしておりました。

すぎやまださんにとっての岡部さんは、本当に揺るぎ無い存在というか、動かぬ大地のような、広い海原のような、大きな大きな存在なのですね。
【 リンクのお願い。 】
すぎやまださん、おはようございます。
今朝さきほど、【月夜水の詩】【月詩Blog】より、
リンクを張りました。【月夜水の詩】のほうは、
簡単ですが、紹介文等、添えています。
何かご都合の悪い点等ありましたら、おっしゃってくださいね。
どんどんひきこまれていって、心をわしづかみにされました。
コメント等書くのが苦手の読み専でしたが、
実は、ずうっと通っていました。
すぎやまださんの描かれる世界が、大好きです。

【 Re: タイトルなし 】
亀レスですみません。

かのんさん、泣かないでさい。
1週間切った、メロディ4月号発売、そのせいですよ。
続きはどんなだろう、わくわくしたり、怖くなったり etc、etc。

>自然と頭の中でアニメエンディング曲の「煙」が流れたりもしておりました。

うんうん、分かります。せつない曲です。

すでに原稿はできているはず。
輪転機にかけられて、雑誌として出来上がりつつあるのでしょうね。
16万冊(1998年3月のデータ)の「秘密」が。



【 Re: リンクのお願い。 】
おお、いらっしゃいませ。夜子さま

リンク、恐れ入ります。都合の悪い点なんて...光栄です。
私も他ではめったにコメントいれないので、夜子のお気持ちは分かります。

少しでも楽しんでいただければ、望外の喜びです。
それで十分です。

【 はじめまして 】
はじめまして。はやぶさと申します。
訪問者リストでお名前を見かけまして拝見させていただきました。
すぎやまださんの書かれる話が、割と好みな話が多くて楽しく読ませていただきました。

薪さん、なんて切ない結果に・・・
何となく『やるどら』(PSで出てるマルチエンディングのアニメシリーズ)のバッドエンディング思い出しちゃいました。
すごい切ないけど、これもある意味では幸せ・・・なのかも知れないですね。青木~罪な男だ・・・
【 Re: はじめまして 】
はやぶささん、はじめまして

めぐみさんのリンクを通じて、いつも拝見しています。
薪さんが、か、かわいい!
「パタパタ走るよ○○さん」 が私のお気に入りです;。

> 薪さん、なんて切ない結果に・・・
> 何となく『やるどら』(PSで出てるマルチエンディングのアニメシリーズ)のバッドエンディング思い出しちゃいました。

うう、ゲームはうとくて...すみません。
でも、せつなさを感じていただけるなら、嬉しい!です。

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