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2次創作 「夜道」

「癒し」がまだ終わっていませんが、口直しに。

(3/28 数行加筆)


夜の高速道路。そんなに遅くはないはずなのに、車の量は少ない。
かたん、かたん、かたん。路面の継ぎ目が、リズムを紡ぎだす。
この一定のリズムと ロードノイズ以外、車内には何も聞こえない。
オレンジ色の光が、岡部と薪の顔を一瞬染め上げて、後方に飛び去る。
単調なリズムと道路灯の行列で、この道は永遠に続くかのような錯覚をおぼえる。

小島郁子の父親に事件の説明をするため、岡部が運転する車で、薪は施設に向かっていた。
明日には次の事件に着手しなければならない。
出来れば小島郁子の事件については、今日中にかたをつけたい。
そのため夜遅くになるが 面会を施設にお願いし、了解は取り付けてあった。

薪は窓の外を眺めている。

小島郁子の人生。陽炎にゆれる砂上の楼閣。
「この先は、もういらない」
どこか心の片隅では、判っていたのだろう。
蜃気楼は眺めるだけならば、いつまでもゆらゆら幻想を見せてくれる。
追いかけるから、蜃気楼は消え幻想だとわかってしまう。
小島郁子はただ眺めていたかった だけなのに。
山崎正が追いやって、幻想だと気づかせてしまった。

幻想か。
そういえば、鈴木は繰り返し僕の前に現れる。
何か言いたいことでもあるんだろうか?
ロマンチストな鈴木は、常に夢を語っていた。
僕はそういうことは苦手だが、鈴木の夢を聞くのは楽しかった。
性格も、理想も、思考も、全然違っていたのに、なぜか分かり合うことができた僕と鈴木。

いや、分かり合っていると思っていたのに。いまは鈴木が、わからない。
なぜ? どうして? あの瞬間、鈴木は何を考えて、何を思っていたんだ?

ああ、この単調な音のせいだ。
埒のあかない事を考えても、自分の尻尾を追いかけてぐるぐるまわるようなもので、きりが無い。

気分を切り替えるため、岡部に声をかける。

「岡部け..岡部、異動願いを出さなくていいのか。
 小島郁子の事件も、父親への説明で終りになる。
 事件を最期まで、見届けただろう。
 異動願いを出すなら、早いうちがいいぞ。
 今なら人員補充していないから、すぐ一課に戻れる」

岡部はちょっと首をかしげて、前を向いたまま答える。

「異動願いは、しばらく保留にします。
 この圧倒的な事件解決力を目の当たりにすれば、捜査官なら だれでも離れられなくなる」

「そうか」

薪はまた窓の外を眺めた。

「しかし、自分にはデスクワークは向かんですな。
 今日1日で、腰が痛くなりました。
 現場が恋しくなったら、異動願いを出しますよ」

眠気覚ましのためか、岡部は話し続ける。

「それに、人の人生や思考、感情が捜査に必要ないことまで分かってしまうのも、辛いもんですなぁ。
 第九にいると、他人の人生まで背負い込む気がします。
 まあ、そのうち慣れるとは 思いますけどね。
 慣れなかったら、やっぱり異動願いを出すかもしれません」

思わず薪は、岡部の顔をみた。

ふーん、やはり2階級特進だけのことはある。
粘り強さへの評判は聞いていたが、直感や理解力もなかなかのものだ。
この数日で、そこまで気がついていたか。

次々判る以外な事実に、圧倒されっぱなしだった曽我や、
新しいおもちゃを与えられた子供のように MRIに夢中になっていた小池の顔を、
薪は思い出していた。

岡部が欲しい。
批判的な世論に対抗するには、第九は 圧倒的な事件解決力を誇示する必要がある。
だが、僕一人では無理だ。岡部の、その洞察力が欲しい。
まあ、岡部が第九に残るか否かは 本人が決める事で、僕がとやかく言うことではない。
幸いその気があるようだが、ただ第3者にそれを邪魔される事が、あってはならない。
たとえば、警視総監... とか。

かたん、かたん、かたん...
車内には再び、沈黙がおとづれる。

「警視総監は狸だからな。
 岡部が報告しなくても、僕の事は他のだれかが 逐一報告しているだろう。
 警視総監には知りたい事を 知らせてやれ。
 僕の事を気にする必要は、ない」

突然の思いがけない話に、今度は岡部が薪の顔を見た。
が、薪は窓の外を眺めているため、表情はうかがえない。
あわてて、視線を前に戻す

薪は行進を続ける道路灯を目で追いながら、唇の端だけで笑った。
これは蛇足だな。僕がわざわざこんな事を、岡部に告げるとは。
やっぱり、この単調な音のせいだ。

(完)





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