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2次創作 「2人の薪 2」

へんてこりんな薪さんで、すみません。

(5/1 一部修正)




「おはようございます、室長」
という岡部の挨拶を無視して、車に乗り込む。
無視した薪のいつもと違う様子に、岡部は首をかしげながらも車を動かし始める。
「..そい」
常は第九まで無言の薪が珍しく発した言葉を、岡部は聞き逃がした。
「え? 何ですか。」
「お・そ・い」
「しかし、法定速度ですよ。警視庁の公用車がスピード違反なんて、目も当てられない。」
「遅い! 違反になって大ごとになるのは運転手のお前であって、僕じゃない。スピード上げろ」
「そんな、むちゃくちゃな。」
「ええい、パトライトを出せ!」
サイレンを鳴らしながら第九に乗りつけるなど初めてのことをして、何やら薪はご満悦の笑みを浮かべていた。


一見いつもの薪であり、何も変わったところはない。
いつも通りに指示を出し、捜査の相談に応じて、問題点を指摘する。
が、昼休みを迎えるまでには岡部を始めとした室員全員が、いつもの薪ではないことを確信していた。

休憩室の自動販売機でコーヒーを買いながら、小池が曽我に話しかけた。
「室長、なんかいつもと違わないか? 雰囲気が冷たいというか、何か兇暴な匂いがするというか。
 室長の機嫌が悪いのはいつものことだけど、今日は格別。モニター室の雰囲気が悪くてかなわない。
 来る途中で犬のウンコでも踏んだんじゃないか。
 せめてニコリぐらいすれば、少しは可愛げが出るのに。」
曽我が妙にすり寄ってきて、上着の裾を目立たぬようにひっぱる。「こ、小池~」
思わず後ろを振り返ると、両手を組んだ薪が立っていた。左足の足先がトントンと床を叩いている。
「すまんな、可愛げがなくて。
 無能な癖にへらず口ばかり達者な部下がいるから、機嫌が良くなる暇がない。
 動かす場所は、口じゃなくて頭にしていただきたいものだ。
 それにしても小池、もう第九で何年やってるんだ。さっき僕が指摘した矛盾ぐらい、自分で気がつけ。
 それとも、お前の目は節穴か?」

薪に突っ込まれることには慣れているはずの小池だが、今日の薪の言いようは...堪えた。
薪はいつも、小池が発した発言内容に対してのみ、反撃する。
だから回りはハラハラしながらも、笑いを含んだ「またか」で済ませることができた。
それが今日は無能呼ばわりやら、過去の出来事まで引き合いに出して、小池の人格を否定し攻撃している。
薪にそんな風に思われていたとは。さすがの小池も驚き傷ついた顔で、コーヒー片手に突っ立ったまま。


「ふん」
言うだけ言うと、動かない小池と曽我を残して、つまらなそうに薪はモニター室へ戻る。
モニター室へ戻ったとたん、青木に呼ばれた。

「薪さん、ちょっと見てください。この画なんですが。」
と青木が指さすモニターには、兄が弟を刺し殺す場面が兄の視点で映っている。
今捜査中のこの事件は、その後兄が自殺をして終わっていた。
「ほら刺される瞬間、弟が急に無抵抗になっている気がするんです。この表情も気になりますし。
 一課は兄弟げんかのもつれ、の線で捜査を進めているんですが、ただの喧嘩じゃない気がします。
 2人の関係を過去から洗い直すことを提言しようと思うんですが、どうでしょう?」
薪は画から人の感情や動きを読み取るのに、長けていた。青木はそれを期待して、薪に助言を求めた。
青木にとって薪の同意が、一課の抵抗を押し切ってでもその旨の提言書を上げる原動力になるからだ。

薪はモニターの画を注意深く眺めるが、何も感じ取れるものはなかった。
そんなはずはない、と2度3度繰り返して見ても、共感はおろか表情の変化すら薪にはよくわからない。
昨日までは、辛いほどに感じ取ることができたのに。
自分の能力の欠けに気がついたが、それを青木に告げるのは今の薪の尊大なプライドが許さない。
青木の質問には答えぬまま、「お前がそう思うなら、提言書上げてみろ。」とだけ言って、室長室へと逃げていく。
え、室長。それだけ..ですか。
完全に肩透かしを食らった青木は、判断にまよったまま途方に暮れる。


午後になっても、第九に漂う違和感は収まらない。なぜか皆浮足立って、集中力を欠いていた。
そこへ突然電話が鳴り、通り魔事件の発生の一報が入る。
裏路地で通りがかりと思われる4人が、殺害された。有力な犯人の目撃証言もなく、犯人は逃亡中。
間髪を入れず、薪が矢継ぎ早に指示を出す。モニター室に緊張が走る。
「第九は被害者4人を並行して捜査を進める。
 最優先事項は、犯人の手がかりを一刻も早く見つけることだ。
 岡部は所轄署から犯行内容や被害者の情報を収集し、第九の情報共有グループウェアに流し込め。
 今井は第一と連携して、取り出した脳のMRIセッティングを手配しろ。早急に、だぞ。
 今回は4人平行にすすめるため常の2人一組ではなく、視覚者一人に付き担当一人の体制とする。
 検証は後回しでいい。
 小池、宇野、曽我、青木は脳が届いたらすぐ捜査に入れるよう、各自事件内容や視覚者の情報を
 事前に頭に叩き込んでおけ。
 今井は手配が終わったら、青木のサポートに回れ。
 10分後に事件説明のミーディングを行う。
 ん? 宇野がいないぞ、どこへ行った?」
岡部が答える。
「宇野は今日、妹さんの結婚式で休みをもらっています。
 今の時間だと..ちょうど式の真っ最中か。あと30分で式が終わりますから、その時間に連絡します。」
「岡部、聞こえなかったのか。早急に、捜査を開始する。
 今すぐ連絡して呼び戻せ。」
「室長、脳がMRIに届くまで、1時間はかかりますよ。
 式が終わってから連絡しても、脳を見る準備が終わるまでには十分間に合います。
 そのぐらい、待ってやったらどうですか。」

薪は一瞬、嘘を突かれたようにポカンと岡部の顔を見上げた。
が次の瞬間、艶然と微笑む。
両手を腰に当て、ゆっくりと岡部の前に立つ。からかう様に首をかしげて岡部を見る。
「岡部、もう一度言ってみろ。」
その声は囁くように甘く、唇は艶を増して緩み、頬は期待でうっすら紅に染まっている。
細めた目は楽しげに輝いていたが、その視線の奥底からは獰猛な意思が垣間見えた。
狙いを定めたネコ科の目。あいつを必ず仕留めてみせる。
狙った獲物が逃げ惑う様を、今から想像して楽しんで、思わずしっぽをピクピク揺らす。

「少ぐらい待ってやったらどうですか、と言ったんです。」
今日の薪は薪でない。落ち着き先のない不安にイラついていた岡部は、反射的に言い返した。
言い返したあと、薪の目を見て後悔した。室長が..怖い。
岡部はいままでで初めて薪を怖いと感じ、そう思う自分に驚いていた。

薪は上着の脇に手を差し込むと、サイドホルスターからSIG P230JPを抜いた。
そのまま銃を掲げると、銃口を岡部の額にあてる。唇を緩めたままで。
それはゆっくりした動作であったが、あまりに意外なことなので誰も止める、いや動くことさえできなかった。
薪が銃を携帯していたことも、それを岡部に向けていることも。
「岡部が僕に逆らうとはな。僕も甘く見られたものだ。」

岡部は思考、いや呼吸すら停止して、薪の目を見続ける。
銃口と視線を岡部の額に当てたまま、薪は今井に命令する。
「今井、宇野に第九に戻れ、と連絡しろ。今すぐに、だ。」
今井は自分に向けられた言葉に気がつかず、薪が不審げに問いかける視線を受けて、やっと金縛りが解けたかの様。
あわてて、宇野の携帯に連絡する。要件だけ伝えるのが、やっと。
「あ、ああ、宇野、今井だ。えーと、緊急捜査が発生した。第九に戻ってくれ。」
今井が携帯を切ると、急な無音で耳鳴りがするほどの静寂が室内を支配した。

「ふっ」
いきなり薪は鼻先で笑うと、銃を無造作にホルスターに戻す。
岡部の呼吸が復活して、大きく息を吐く。
「なんて、な。冗談だよ、岡部。冗談。」
いや、全然冗談ではなかった。部屋の空気は緩まず、薪以外は凍ったまま。
「なに突っ立っているんだ。僕に撃たれたいやつがいるのか。」
皆はじかれたように動き出した。
薪から少しでも離れたい、のが本音だったのかもしれない。

(続)



うまく書けなくて、補足します。
薪さんが2人に分かれました。
1人は、”善”で括られるような、優しさとか思いやりの部分。
1人は、”悪”で括られるような、自己中心や尊大さ攻撃性の部分。
今回は"悪”の薪さんのお話です。

薪さんが岡部さんに銃口を向けて欲しくてスタートし、とりあえず目的を果たしてしまいました。
これから、どうやって風呂敷をたたんでいきましょうか?

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コメント

【 ぎゃはははは 】
面白い、面白いです!
こんな薪さんも結構好きかも…超キレてて(笑)
でも部下からは嫌われるだろうなあ(^^;
思ったより有能じゃないみたいだし。

つづき、つづき…
【 面白い!!! 】
薪さんだけど薪さんじゃない!!!
これって本物の方の薪さん・・の筈ですよね???
実は3人いる?!とかw それも面白いかも・・・

大人しい方の薪さんシチュも楽しみにしてます♪

【 Re: ぎゃはははは 】
■ こんにちわ、めぐみさん。

楽しんていただけたようで。あー良かった。
ダークな薪さんにしたかったのですが、ダークさが足りなかったかも。

絶対部下からは嫌われますよ!

■ いらっしゃい、コハルビヨリさん

分かりにくくて済みません。
”善”と”悪”と分けて、後者の薪さんです。

>大人しい方の薪さんシチュも楽しみにしてます♪

ああ、広げた大風呂敷の畳み方が難しい..どうしよう?
【 きゃあ!!(/Ⅱ\;) 】
お久しぶりです。こんばんは
チーム関西(勝手に結成)・わんすけです。

なるほど!ふつうの薪さんとおっとり薪さんに分かれたのではなく、薪さんの中の善悪が分かれてしまったのですね!!

きゃあ!!(/Ⅱ\;)岡部さんに銃口を!!!
ところで、悪玉薪さん・・・なんか艶かしいですね・・・。ハッΣ(・・;)目隠しプレイはあんたの仕業か!!悪玉薪さん!?

これは・・・善玉薪さんが出勤したらえらい騒ぎになりそうです・・・(・・;)ある意味、悪玉より大変なことに・・・・。ドキドキ・・・

総ての行いは自分へと返って来るので、「つづき つづき つづき」とは言いません!!(>_<)
でも待ってますv
【 Re: きゃあ!!(/Ⅱ\;) 】
こんにちわ、わんすけさん

> きゃあ!!(/Ⅱ\;)岡部さんに銃口を!!!

うふふ、これがやりたかったんです~。

> ところで、悪玉薪さん・・・なんか艶かしいですね・・・。ハッΣ(・・;)目隠しプレイはあんたの仕業か!!悪玉薪さん!?

言われてみると確かに.. 何故? 特に意図はしていないんですが。

> これは・・・善玉薪さんが出勤したらえらい騒ぎになりそうです・・・(・・;)ある意味、悪玉より大変なことに・・・・。ドキドキ・・・

はい、私も騒ぎの予感にドキドキしてます。
というか、書けるかどうかの不安にドキドキしてます。

> 総ての行いは自分へと返って来るので、「つづき つづき つづき」とは言いません!!(>_<)
> でも待ってますv

うう、過去にほったらかしの刑を受けているSSもありますし。 受刑2作目か?
なんとか...トライはしてますね。

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